木崎湖をあとに、稲尾道と合流した塩の道は、溢れる花の中を中綱湖へと進みます。


海の口上諏訪神社の参道を下った左、西海の口多目的集会施設の正面の池には
水芭蕉の花が咲いていました。右を見れば木崎湖の北端、多数の吹流しがありました。
ヘリポートがあるわけでもなく、何の目的で設置されているのか謎でした。


すぐ先で、再び道は二つに別れます。ここも塩の道は左上へと上って行きます。
その分岐点には
塩の道・猿ヶ城トレッキングコース案内板があり、
伊勢宮の先を
金山神社へ向かわず、右へ下って行くのが塩の道とわかります。


奥秩父の山でよく見た石楠花が香りの良い花を咲かせて、旅人を和ませます。
シダレザクラの向こうには、これで見納めとなる木崎湖が望めます。


何の説明板もありませんが、これが西海の口堂(伊勢宮)と思われます。茅葺の素朴な
お堂は、塩の道に似合います。牛を木に留め、お堂の縁側に腰を下ろして休む牛方が見えるようです。


左へ登って行くと、金山神社から猿ヶ城跡へと向かうコースになります。
我々は右の塩の道へと下ってゆきます。正面には新しく美しい茅葺の
民家があり、道の両側は色とりどりの芝桜に彩られていました。


右に見えてきたレトロな建物は木崎湖漁業協同組合です。手前の池には鱒でしょうか
たくさんの魚達の泳ぐ姿が見えます。周囲には大きな池もあり、ここで養殖した稚魚を
木崎湖に放し収穫しているのでしょうか。しかし現在は村人のたんぱく質補給のため
と言うより、観光客の釣り魚を提供しているといった感じです。そんな静かな漁協です。


漁協を過ぎると集落も途切れ、山際の田圃の中の道を進みます。
塩の道・千国街道の道標が完備されていて安心して歩けるコースです。


街道ウォーカーは、つい前ばかり見て歩きがちですが、ここではひとつ
振り返ってみましょう。遠く
木崎湖の向こうから歩いてきた道が見え隠れ、
何ともいえない素晴らしい気分になります。たとえばここへ車でやってきて
同じ景色を見ても、その感動は得られないと思います。歩く旅の醍醐味は
こうして自分の足で歩いてきた風景に出会うことでしょう。


漁協から700m、道はまだ真っ直ぐ延びていますが、右下に踏切が見えたら
渡りましょう。真っ直ぐ進む道は、やがて行き止まりとなってしまいます。
線路の傍らには、列車をカメラに収めようと構えている御仁が一人、今風に
申せば
撮鉄ということになるでしょう。時刻表を見るとまだ小一時間列車は
やってきません。頭の中で構図を巡らすこの待ち時間が彼らにとって素敵な
時間なのかもしれません。土手の向こうにも2人ほど同好の士が来ました。


国道までの350mは菜の花畑の中を進みます。やがて右側に小川がやってきて
その清流を楽しませてくれます。ここでも是非後を振り返って景色を楽しみましょう。


久しぶりに国道148号線へ出ました。この国道は大町から糸魚川までの70.9kmで
やはり通称、塩の道や千国街道、糸魚川街道、松本街道と呼ばれています。
ここから800m13分ほど国道歩きとなります。歩道は無く白線のみなので
大型トラックに注意しながら進みます。国道に出たところが
海ノ口除雪基地なので
逆コースの方は、ここで旧道に入ります。道標には青木湖まで2.9kmとあります。


800mの間には、少し見どころがありました。大町市のカワシンジュガイです。
手打ちそば純の先、少し広くなった場所の左側にその案内板はあります。


 大町市指定天然記念物

 大町市のカワシンジュガイ
     昭和六十二年(1987)三月二日指定

  この中部農具川には、カワシンジュガイが生息しています。カワジンジュガイは
 約二万八千年前には拡く分布していましたが、現在では北方の河川や山間の渓
 流にわずかに生き残るのみとなりました。この貝は川の砂底に深く体を埋め、立っ
 て生活をします。いったん川底から取り上げられると再び川に戻されても、押し流
 されて死ぬこともあります。
  カワシンジュガイという名前は、貝殻の内側が真珠光沢をもつことからついた名
 で、真珠が取れることはなく、また、食用にもなりません。
  カワシンジュガイは幼生の時代にヤマメのえらで寄生生活を送ります。カワシン
 ジュガイやヤマメがいつまでも生活できるよう川を清潔にして『生きた化石』を守り
 ましょう。
                                    大町市教育委員会


川真珠貝、きっとこう書くのでしょうが、初めて聞く名前の貝です。
この川は青木湖、中綱湖から流れ出る川ですが、湖の汚染がすぐ
影響しそうな感じです。この看板は、湖畔にもあるのでしょうか。


左中綱湖・黒沢高原の道路標識が現れたら、国道を別れ左へと入ります。
頭上にはサンアルピナ
鹿島槍スキー場・中綱湖民宿のゲートが迎えてくれます。
線路に沿って進むと、先ほどの国道が頭上を通過します。


国道の下から出ると大糸線の踏切で、渡るとすぐに道は二つに別れます。
ここでは
左へと進んで下さい。川を渡って180m、大谷売店の看板先を右へ入ります。


桜の木の下に新旧の庚申塚が現れたら正解です。家々の合間には
鹿島槍スキー場のリフトが見え隠れ、ここが中綱の集落となります。


大きな中綱湖民宿案内図がある場所に突き当たり、道は二手に別れます。
どちらへ行っても塩の道ですが、
中綱神社の前を通るのが本命とみて右へ
進みます。左手に出てきたのが中綱神社、拝殿と本殿、舞台からなるのでしょう、
どっしりとした重厚な造りの神社です。鳥居も塩の道では珍しく、明神鳥居に
アウトリガーが付いた厳島神社の海上鳥居と同じ
両部鳥居です。


中綱集落の中には、塚が多く見られます。大町にあった大黒様もあり、
その信仰がこの地まで影響していることを物語っています。また、中綱湖には
中綱湖のつりがねという伝説があります。昔、湖畔に十国寺という寺があり、
大地震で寺もろとも大鐘が湖に沈んでしまいました。その鐘を吊り上げようと
村人は試みるのですが、その度に大雨になり、失敗し、上げようとした村人は
祟りにあったということです。それからその釣鐘が湖の主となりました。


少し行くと左に大きな木があり、御成婚記念の石碑があります。木の大きさから
みると平成天皇の御成婚記念でしょうか。小さなお堂の先には
二十三夜塔もあります。

さて村はずれに来ましたが、ここからが問題です。村の向こうに塩の道は
見えるのですが、どうやってそこへ行けば良いのかが分かりません。
中綱湖民宿案内図のあるY字路を左へ進めば、突き当りでクランクになる
のですが、中綱神社の前を進んできた場合は少々迷います。
右に
民宿あらやしきがある辻を左に曲がり、右に民宿志も、民宿仲屋とみて
仲屋の先を右へ入ります(写真左)。写真右の道が塩の道、杉の木の
下にある新しい祠を目印に、この小径を進んでください。


こんな中綱湖を望む風景になったら正解です。
路傍には水仙が咲き、田圃の向こうに水面が輝きます。


木崎湖と違い、中綱湖畔は少し高みを進みます。湖面を眼下に見下ろすと
キャンプ場でしょうか、
立派なトイレとバンガローが見えます。やがて湖畔の道と
合流しながら、更に上へと登って行きます。


遠くで踏切の警報音が響きました。あの撮り鉄の獲物がやっとやって来ました。
早速、街道ウォーカーもにわか撮鉄になって2両編成の
大糸線を激写
あとでよく観ると、列車の下に大勢の釣り人が楽しむ様子が写っていました。


中綱湖と分かれると、青木湖とを結ぶ川を渡ります。そして小径の坂を登れば
国道から青木集落へ入る道に合流します。