風の便り episodo.5
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電力会社 東海道を旅していて,色々な人と出会うが,我々が電力会社の社員になったのは,たった一度の出来事であった。富士川を渡り東名高速を越し,海を見ながら坂を下ったところに,その店はあった。とても美味しそうなパンを作っている清美軒である。11年前この店を訪れたとき,たまたま電気の知識があった我々が見たのは,今にも漏電しそうな分電盤であった。 配線はめちゃくちゃ,ヒューズ付きの碍子製スイッチを使ったり,リード線は皮膜がめくれ上がり,感電ならまだしも,火事にさえなりそうな分電盤であった。なんとなくアドバイスして立ち去った記憶があった。 それから,11年私が見たのは見違えるような分電盤であった。話を聞くと,昔,電力会社の人が歩いて東海道を旅していて,この店に立ち寄り,すぐ直しなさいと言って立ち去ったので,電気屋さんを頼んで直したそうだ。古い分電盤を見た電気屋さんも,危険な状態に驚いていたという。昔は親切な旅人がいたんだと,店のかみさんは私に自慢するのである。 もちろん,その電力会社の人が,11年前の私だと言ったときのかみさんの顔を皆さんにお見せできなかったのが非常に残念である。 |